Miklos Gaal: Sightseeing Tour ミクロス・ガール:観光ツアー

Miklos Gaal ミクロス・ガール

型番:bopm002_2

 

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著者:  Miklos Gaal ミクロス・ガール
出版社:  Hatje Cantz 2005年刊
56頁 , 図版30 , オールカラー , 27.5×23.7cm
ハードカバー , 英/ドイツ語
コンディション:  新品 (シュリンクラップ未開封)
  ※四隅にほんの僅かにぶつけた跡あり。

この写真集を一言でまとめるなら、北欧的メランコリックな離人症的世界観を表現しようと 「あおり」 の技法を用いて試みたものの見事に失敗した、されど、その失敗が期せずして、ヒューマニスティックな精神の <業> のようなものを鷲掴みにして引っぱり出すことに成功した、そんなアンビバレントな一冊です。
  かつて生々しく存在していた現実世界や、今まで親しくしていた隣人が、突如と生気の無い、まるでお人形のような作り物の世界として立ち現われた時の驚きや恐怖。
  もし、本城直季の 『small planet』 のような 「あおり」 の技法を用いて見事にミニチュア化された風景の中へと人物が溶け込んだのなら...........、意識的に (結果的に?) 人物像を排して作られたミニチュアと見紛う現実像に人物が滑り込んだのなら...........、そこにはきっと先程の <離人症的視覚像> が描き出されるのでは...........。
  そんな微かな期待も一目瞭然、ミニチュアの中に <ヒューマンの穴> がそこかしこに穿たれ、魔法が一気に解けてしまいます。見る者の脳が、生き生きとした <ヒューマンの息吹き> を嗅ぎ取り、ミニチュア化を台無しにしてしまいます。
  詩的表現の力を借りずに <共通認識外> のその人の世界像が客観的に存在しうるか。意図したかしないかは別に、そんな不可能のイメージを形づくろうとした、見るからにナイーブそうなこの北欧人にオトグス・スタッフも思わずエールを送る、そんな一冊です。

※再入荷時追記
  最近、本城直季が『TREASURE BOX』という宝塚歌劇団を被写体に新しい写真集を出しましたが、まさに上記のような問題意識を持って、人物を配して<お人形の世界>の構築を目指しているのが手に取るように分かります。
  というか、分かりやすすぎるというか、宝塚歌劇団の<はなから御伽の世界>の力を借りて手前味噌にやったら元も子もないと言おうか、いま一度、ミクロス・ガールの<失敗の味>と見比べてみてください。面白いです。

※掲載画像はすべて以前に販売したものです。