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著者: |
Walter Spies, Beryl De Zoete (著) ヴァルター・シュピース、ベリル・デ・ゾエト |
出版社: |
Oxford University Press 1995年刊 First published |
213頁 , 図版230 , オールモノクロ , 22.5×26cm |
ハードカバー , 英語 |
コンディション: |
G/VG |
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※ジャケット全体に中程度のスレと傷と、上部全体にヨレと右角に1ヵ所5mmの破れあり。本体の前後遊び紙に中程度の黄ばみ汚れと、天と小口と地に少しのヤケと汚れあり。ページ内のコンディションは:F |
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近代バリ島の絵画にダンスに演劇と、かつての<土着の賑わい>から、西欧基軸の対他的自立した『作品』世界へと、そのコンダクター的手腕によって見事なまでに昇華させたヴァルター・シュピース。
そんな彼が数多く残したバリ島での写真を、ノース・ロンドン大学教授マイケル・ヒッチコック(Michael Hitchcock )とハーンマン美術館資料マネージャーのルーシー・ノリス(Lucy Norris)両氏が詳細な解説を付し、比較的大判の図版でもって取りまとめられたのが本書で、たいへん稀有な一冊です。
20世紀前半、<明瞭明晰>を常とする西欧列強の前で、確固たるフォルムを持たぬが故に、消えて無くなってしまいそうなサンヒャン・ドゥダリのトランス・ダンスに、ヒンドゥーの神々の叙事詩を乗せて、見事に伝統芸能『ケチャ』としてのフォルムを与えたヴァルター・シュピースが、それらのイメージをより強固なものとすべく、当時最先端のカメラ機器を携えて、フィールドワーカーとしてではなく、自らもその輪の中に深く分け入り撮り収めた写真の数々。
そのあまりにステレオタイプすぎる写真を批判するのは簡単ですが、そうではなく、シュピース自らの<可視化の欲望>によって、時には演出が施され、時には相当にこねくり回して生み出されたであろう写真の数々が、今日の人々が想起する全きバリ島のイメージをことごく先取りしているかに見えるほどに、見事なまでに『神秘の島 バリ』を表徴していることに素直に驚きをもつべきだと思います。
本書を真摯な心でもって眺めれば、写真というメディアを生み出した人間の欲望の根っ子に少しは触れ得たような気になれる、そんな<リアリティと胡散臭さは紙一重>のオトグスおすすめの一冊です。 |
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